港かなえさん原作”リバース”を読んで鳥肌がたった話

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2017年4月スタートのドラマ”リバース”。”イヤミスの女王”として知られる湊かなえさん原作のドラマですね。淡々と伏線を張りながら、最後は大どんでん返し。そして、ちょっと嫌な感じを残して、後味悪く終わらせる珠玉のミステリー作家さんですね。

ドラマを見て、いてもたってもいられず、一気通読をした感想をお届けします。原作もドラマ同様、鳥肌ものでした。

関連記事:湊かなえ原作”リバース”に出てくるコーヒショップ『クローバーコーヒー』は実在するの?

物語のあらすじは?

深瀬和久は、事務機会社に勤めるしがないサラリーマン。今までの人生でも、取り立てて目立つこともなく、平凡を絵に描いたような男だ。趣味と呼べるようなことはそう多くはなく、敢えていうのであればコーヒーを飲むこと。そんな深瀬が、今、唯一落ち着ける場所がある。それは〈クローバー・コーヒー〉というコーヒー豆専門店だ。豆を売っている横で、実際にコーヒーを飲むことも出来る。深瀬は毎日のようにここに来ている。ある日、深瀬がいつも座る席に、見知らぬ女性が座っていた。彼女は、近所のパン屋で働く越智美穂子という女性だった。その後もしばしばここで会い、やがて二人は付き合うことになる。そろそろ関係を深めようと思っていた矢先、二人の関係に大きな亀裂が入ってしまう。美穂子に『深瀬和久は人殺しだ』という告発文が入った手紙が送りつけられたのだ。だれが、なんのために――。
深瀬はついに、自分の心に閉じ込めていた、ある出来事を美穂子に話し始める。全てを聞いた美穂子は、深瀬のもとを去ってしまう。そして同様の告発文が、ある出来事を共有していた大学時代のゼミ仲間にも送りつけられていたことが発覚する。”あの件”を誰かが蒸し返そうとしているのか。真相を探るべく、深瀬は動き出す。

簡潔に物語の内容をまとめると、

  • 3年前に大学のゼミ仲間で行った旅行で死亡事故が起きた
  • その死亡事故の真実をメンバーは隠している
  • 死亡事故に関わっていたメンバー4人に”人殺し”という告発文が送られる
  • 告発文を送った人物は誰なのか?事故の真相はなんだったのか?を深瀬くんが探る
  • 事故死した親友の広沢くんのことを知るために、友人たちに話を聞きに行く
  • 告発文を送った人物に近づく
  • 最後に、広沢くんが死ぬきっかけを作った人物を知る

っていう流れです。大まかにまとめると。

物語の流れが秀逸すぎる

物語の展開、流れが秀逸です。

ミステリーの王道を行く、淡々と伏線を張り巡らせながら、結末に近づいていきます。主人公の深瀬くん行きつけのコーヒーショップ”クローバーコーヒー”での場面。

平凡でコミュ障の主人公、深瀬くんのコーヒーとの関わり。唯一、自分にとって自信がもてるコーヒーが物語のキーポイントになっています。

「あの事件。自分だけは悪くない。他の人が事件の原因を作った」

と思っている深瀬くんにとって、唯一無二の親友だった広沢くんの死。そして、”人殺し”の告発文。愛する恋人、越智美穂子との崩れていく関係。平凡な幸せを壊されていく心情。ゼミ仲間たちとの牽制。

資源の真相は、いったいなんだったのか?あの時、いったい何が起こったのか?告発文は誰が書いたのか?広沢の家族なのではないか?

広沢の死は、本当に事故だったのか?ゼミ仲間の村井の言葉も相まって、真相に近づくために、広沢の友人たちに話を聞きに行き、そこで初めて知る広沢という男の一面。

なぜ、広沢は自分と友達になってくれたのか?

など、主人公深瀬くんの揺れ動く心の描写が秀逸です。

張り巡らされた数々の伏線

この物語に張り巡らされている数々の伏線。そして、その伏線の回収。秀逸です。

ここでは、ぼくが「やばい鳥肌がたった」と思った伏線を紹介します。

コーヒーがつなぐ物語の展開

伏線というよりも、物語のキーポイントですが。事件の真相、物語の展開はすべてコーヒーから始まります。

大学で友達ができなかった深瀬が、ゼミで親友と思える男広沢と仲良くなれたのも、コーヒーがきっかけ。一緒にコーヒーを飲みながら過ごす時間が多かったから。

ゼミ仲間で、普通に考えたら仲良くなれなさそうな3人(村井・浅見・谷原)と旅行に行くきっかけになったのも、コーヒー。普段はまったく仲良くない”住む世界が違う”3人も、深瀬のコーヒーは認めていた。

自分の淹れるコーヒーに自信があったからこそ、出会えたコーヒーショップ”クローバーコーヒー”。もしクローバーコーヒーに足を運ぶことがなかったら、物語の進行はまた違ったカタチになっていたかもしれません。

コーヒーがつないだ恋人”越智美穂子”との出会い。親友の最後に渡した蜂蜜入りのコーヒー。

広沢が家族に話していた、美味しいコーヒーを淹れてくれる親友(深瀬)の存在。そして、コーヒーに蜂蜜を淹れる飲み方を教えてくれた広沢。

物語を進める上で、コーヒーは外せません。

広沢の交友関係がつなぐ見えなかった側面

いままで知りえなかった広沢という親友の本当の顔。ミステリーによくあるキーパーソンの素顔が明かされていくパターンですね。

話の展開は、”最後は序盤のキーパーソンに繋がるという王道の流れ”です。ここでいう序盤のキーパーソンは、間違いなく恋人である”越智美穂子”なので、そこに関しては「まぁそうだよね」というところなんですが、一回クッションを挟む流れに鳥肌です。

広沢の家族に始まり、

  • 中学までの幼馴染
  • 高校のバレー部の部長
  • 幼馴染で高校まで一緒だった女の子
  • 高校で一緒だった、広沢に恋をしていた女の子
  • 高校〜大学で親友だった冴えない男

と流れていきます。ここで、実は広沢はかなり人気のある人物だったということがわかります。主人公の深瀬は同じ人間性を感じ、仲良くなったと思っていたようですが、実は違う。それを友人たちの話を聞き受け入れ始めます。

最後は高校〜大学で親友だった冴えない男、古川と出会い自分は本当は親友じゃなかったんじゃないかと思い始める。ここ、かなり切ない。

物語の進行とあまり関係ない伏線の回収

そして、高校の友人に借りた卒業アルバムに写っている”ある女性”。この女性を深瀬は知っていた。見たことがあったからだ。

と、ここで「おっ美穂子に繋がった!」と思いましたが、さらにワンクッション。伏線を回収する流れに。

実はゼミ仲間の浅見と同僚の木田先生(張り紙をみた先生)は、広沢と同じ高校だった。けど、実は物語に関係ない。なんていう伏線の回収の仕方…。「えっ、嘘マジでそっち?白ゆき姫殺人事件ばりの繋げ方じゃん!」って思ったけど、全く関係ないっていう。

マジかよ。木田先生が広沢の元彼女で、それを知った浅見が罪の意識から一緒に告発文を出して、最後は警察に一緒に行く流れに持っていくのかと思ったよ。でも、そうしたら美穂子は?って混乱した。

一回フェイク入れつつ、でも伏線はうまく回収するあたりが秀逸だね。

それぞれ異なった告発文の出し方

”人殺し”の告発文の出し方も、それぞれ見ていくと

その人にとって一番ダメージの大きい告発の仕方

に見えますね。

ただ、時系列で追っていくと、主人公の深瀬だけ告発文の出され方が異なります。

  • 深瀬:グリムパンで働く”美穂子”宛
  • 浅見:寮に停めている車に貼られていた
  • 村井:選挙事務所の窓に貼られていた
  • 谷原:仕事先に送られてきた

と、浅見・村井・谷原は直接告発されているにもかかわらず、深瀬のみ直接ではない。深瀬に関しては、一番の幸せを壊す意味での美穂子宛かと思いましたが、実は深瀬の告発文のみ”イタズラ”だったことが終盤で判明。

ようするに、美穂子はイタズラで送られてきたストーカーからの嫌がらせを使って、深瀬にカマをかけただけです。そこで、事件の真相を知ってしまった。それから他の3人に告発文が送られることになったわけです。深瀬が素直に話をしなかったら、3人には告発文は送られていないってことですね。

アレルギーがつなぐ物語の真相

この”アレルギー”の問題が、この物語の嫌な感じを醸し出す上で重要なファクターとなります。

ここも、かなり凝った伏線内容。最後の最後まで気づきませんでした。大どんでん返しはすべてここに集約されています。

  • ゼミの旅行で、広沢だけ蕎麦屋に行かず自己中に別行動をとった理由
  • 深瀬がお酒を飲めない理由
  • 深瀬の飲めない理由を聞いて、お酒を飲んだ広沢の気持ち
  • 「お酒を飲むとすぐに眠くなる」というキーワードを持つ広沢
  • お酒を飲んで車を運転した広沢
  • そんな事故を起こすような運転をするわけがないと思っている友人たち
  • 蜂蜜をコーヒーに入れて飲む方法を教えてくれた広沢
  • せめてと思い、蜂蜜入りのコーヒーを渡した深瀬
  • 美穂子しか知らなかった広沢の一面
  • 深瀬がマスターと奥さんに教えた蜂蜜入りコーヒーの美味しさ
  • マスターが蜂蜜にはまったことで増えたバリエーション
  • 美穂子と広沢の関係を知った後の一杯のコーヒー

すべての伏線が、”アレルギー”に繋がります。

広沢が蕎麦屋に行かなかったのは、決して、カレーが食べたかったからではないんです。どうしても蕎麦屋に行けなかった理由があったんです。

広沢は”蕎麦アレルギー”でした。まさかの衝撃の事実。最後の最後で明かされます。これには気づけなかったよね。「あぁ、だからひとりでカレー屋に行ったんだ!」と。だから深瀬のビールが飲めない話を聞いて、「おれは飲むよ」と言ったんだ。

そして、友人たちから聞いた、「頼んだら断れない性格」。そりゃいくよな。

ただ、これだけでは終わりません。

最後の最後。美穂子と深瀬の話が終わった後の描写。ものすごくダメージが残る展開で終わります。

マスターが蜂蜜にはまってたんですね。いろんな蜂蜜を探してきて、コーヒーにあるものを見つけてるんですよ。で、蜂蜜入りを勧めるわけです。深瀬が蜂蜜をコーヒーに入れることは、マスターも奥さんも知ってます。

だから、「この蜂蜜。何かわかる?」なんて純粋な質問が飛んでくるわけです。

そして、深瀬は知ってるんですよ。この蜂蜜を。ゼミ仲間で行った旅行での途中で寄った”道の駅”に置いてあった蜂蜜。原材料は書いてなくてわからなかったけど買った蜂蜜。広沢に渡したコーヒーに入れた蜂蜜。

何の花かはわからない。深瀬は聞きます。「リンゴですか?」と。

そして、マスターの奥さんは弾んだ声で言います。

「蕎麦です」

と。

そして最後の2行。

広沢を殺したのは……。

俺だったのか。

大どんでん返しの果てに深瀬はどう生きていくのか?

深瀬は、美穂子との話の中で、真実を広沢の両親に話すことを決意します。

また、広沢のことをもっと知りたい。もっと知っている人たちに話を聞いて、ノートに書いていきたい。美穂子もそのことに同意してくれます。

「ノートが埋まったら…」

そう考えていた矢先の出来事。

ビールを飲ませてしまったことによる運転ミスではなく、蕎麦アレルギーによる事故だった。それを知ってしまった。

いままでは4人で抱えていた過去の闇。それが、ずしっと深瀬ひとりにのしかかる。すべてを話したいま、もう一度美穂子に話すことができるのか。真相を知ってしまったいま、広沢の両親に話すことはできるのか。

こんな終わり方ってありですか?  という嫌な終わり方、さすがイヤミスの女王です。

この先、深瀬はどうやって生きていくのか。

それは各読者が考えていくことなのかもしれません。

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